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【ペーストペーパーの魅力とは】カリグラフィーのバックグラウンドにも使える自分で作る装飾紙

ペーストペーパーサンプル画像

カリグラフィー作品を作るとき、文字のバックグラウンドを紙の地そのままではなく、何か工夫して作品をより豊かな感じにしたいと思うことがあります。

水彩絵の具やアクリル絵の具でも美しいバックグラウンドは作れますし、薄墨なんかも渋くてかっこいいものができますが、バックグラウンドで何か参考になるものがないかといろいろな作品を見ていたら、あるときそのどれでもないバックグラウンドのカリグラフィー作品に出合いました。

それが結局ペーストペーパーだったのですが、それと分かるまで、どうやったらこんなマチエールが作り出せるのだろうかと試行錯誤を重ねてアクリル絵の具にメディウムを混ぜたり、塗り方を工夫してみたりと色々やっていました。

そんな時たまたまある洋書で「Pastepaper」という言葉を見つけネットで調べてみたところ、日本のサイトではほとんど情報がなく、海外のサイトを見てどういうものかやっとわかったのでした。

実際に講義を受けたわけではないので、同じようなマチエールのものを再現するにはまたもや試行錯誤が続きました。糊の種類、濃度、絵の具の量、使う道具など、ほとんど海外のサイトやYouTubeなどから少しずつヒントを得て組み合わせ、なんとか完成形に近づけることができました。

分かってしまえば簡単に美しい模様や画面が作り出せるペーストペーパーですが、日本で広まっていないのが不思議です。今回はそのペーストペーパーの魅力をできる限りお伝えしようと思います。

マチエール(matière)とはフランス語で「材料」「素材」を意味する言葉。
画面上に現れた画材の特徴で絵肌のことです。触った感じではなく、見た感じのザラザラ感やツルツル感、光沢感、凹凸、硬い、柔らかい…などすべての質感のことです。

「ペーストペーパー」とは

ペーストペーパーは16世紀中ごろのドイツ語圏で生まれた装飾紙の一つで、本の表紙や見返しなどに使われていました。イタリアなどヨーロッパ各地で広まった後、アメリカでも広まりましたが一時は廃れていた時期もあったようです。

海外には作家さんがたくさんいますが、日本でも手製本に携わる方など、数は少ないですが作ってらっしゃる方がいます。

海外の装飾紙というと、イタリアのROSSI社のものやマーブルペーパーなどはよく見ると思うのですが、ペーストペーパーはなかなか見かけることはありません。

でも、実はペーストペーパーが誰でも作ることができる最も簡単な装飾紙の一つなんです。

名前のペーストとは「糊」のことで、糊に水溶性の絵の具を混ぜたものを紙に塗り、濡れているうちに色々な道具で模様を作って乾かす。ただこれだけです。

模様を作る道具はどんなものでもOKですし、デザインは無限です。糊は乾く前は少し盛り上がっていますが、乾くとその立体感は保たれたまま平らになり、不思議なマチエールになります。

初期の頃は単色で作られ、いろいろな道具で模様をつけていたようですが、どんな色でも(ゴールドやシルバーなどのメタリック系の色でも)使用でき、自分の表現したいままに作ることができますし、偶然にできる模様もまた驚くほど美しかったりします。

用途としては製本の他にカルトナージュにも使えたり、ペーストペーパーそのものでアート作品を作ったりと可能性はたくさんあります。(一部写真を下に載せますが、本サイトのペーストペーパー作品のページもご覧ください)

カリグラフィーのバックグラウンドに使用する場合は、紙にそのまま書くときとは書き味が全く違うので試し書きを十分します。

模様があってガイドラインが分かり辛いですが引くことはできます。

右のペーストペーパーは左のものより水分を多めにし、柔らかい感じを出しています。

マチエールの違いが分かりますね。

糊(ペースト)について

海外の作家さんのサイトを見ると、いろんな方がいろんなレシピを作っています。

材料となるものは小麦粉、米粉、コーンスターチ、メチルセルロースなどがありますが、これらは冷水や、熱湯を測ったり、グツグツ煮たり、ダマができないようになめらかにしたり、冷めるまで時間がかかったり、保存ができないなど、創作意欲を損ないかねない工程があるため私はその方法では作っていません。(あ、これは個人的な感想なのでそういった工程を楽しめる方はやってみてくださいね。使う原料で違った艶感が出るのでやってみても面白いです。)

それではどうやっているかというと、糊はでんぷんを原料としていればいいので「フエキ糊」を使っています。それを水でのばすだけ!

フエキ糊はトウモロコシでんぷん=コーンスターチを原料としています。

フエキ糊

海外の方からしたら日本はうらやましい環境なんです。でんぷん糊を作る会社があるんですから!これは障子を貼ったり、表装や紙の修復などをする文化があるからなのでしょうか。

余談ですが、「フエキ糊」と聞いてすぐわかる方、西日本の方。東日本の方は「ヤマト糊」と言えば分かると言われています。幼稚園・保育園や小学校低学年の時に使っていたねっとりする糊です。

それぞれの原材料と製造・販売元
フエキ糊 ⇒ トウモロコシでんぷん、不易糊工業株式会社 本社は大阪
ヤマト糊 ⇒ タピオカでんぷん、ヤマト株式会社 本社は東京

両社とも子供が安全に使え、小麦アレルギーを引き起こさないよう小麦は使用していないそうです。
口に入れても無害なようです。

ペーストペーパーにはどちらも使えそうなのですが、ヤマト糊は水を混ぜないでくださいということですし、混ぜると変色するという情報もあったり、製本をされる方がフエキ糊を使っていたりするので私はフエキ糊を使っています
(ちなみに私はフエキ糊もヤマト糊もどちらも使って育ちました。やはり愛知県が東西の分かれ目⁈)

フエキ糊のほかには正麩糊(しょうふのり)も使えます。

正麩糊は小麦粉から抽出されるでんぷんを原料としていて、日本では古くから日本画や書の表装、修復などに使われてきました。
正麩粉を買うと自分で煮なければならないので、煮てあるタイプのものを買うと薄めて簡単に使えます。

ホームセンターなどで手に入る「障子のり」はカビ止め剤が入っていたりして絵の具を混ぜた場合の変質などが予想できないので使わない方がいいでしょう。

模様をつける道具について

刷毛、櫛、ローラー、スタンプ、指、フォーク、へら、梱包用のプチプチ・・・跡が付くものなら何でも使えます。百均で面白い模様ができそうなものを探すのも楽しいです。

ペーストペーパーの模様を描く道具

きれいな縞模様を作る道具としては、ボンドへら陶芸用品の櫛が便利ですが、いらなくなったクレジットカードなどを自分好みに切って作ると楽しいですし安上りです。

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同じ道具を使ってもできる模様は無限にあり、人によっても違った模様になるので正解はありません。気負わずにできるところもペーストペーパーの魅力です。

絵の具について

色をつける材料としては水溶性の絵の具が向いていますので、水彩絵の具、アクリル絵の具、アクリルガッシュが使えます。絵の具によって色の出具合、糊との混ざり具合が違うので経験を積むしかありませんが、その途中で偶然いいものができたりするので面白いです。

私がよく使うのはニッカーのデザイナーズカラーです。
発色と伸びが良く、色数も多いので気に入っています。

紙について

ペーストペーパーは紙の全面に糊を塗るので、乾くと強度が上がります。服の糊付けと同じですね。なのでそこまで厚い紙でなくても大丈夫です。私は100㎏前後のものを使っています。一番好きなのはマルマンの図案スケッチブックで、仕上がったときのパリッとした感じとほんの少しシボの入った風合いが気に入っています。

これより薄い紙でNTラシャもよく使います。
出来上がったペーストペーパーをどう使うか、どのような風合いにするかで紙を選ぶといいです。

紙の厚みについては下記の記事を参考にしてください。

その他の道具

・ペースト用の容器(空き瓶など)
・使用する色数分の入れ物(瓶でも、丸皿でも)
・使用する色数分の筆か刷毛(安いので十分)
・スポンジ(紙を湿らすのに使います)
・スポンジを浸せる大きさの水入れ
・霧吹き
・ぼろ布
・新聞紙(出来上がった紙を乾かすため、床にたくさん広げておきます)
・ビニール製のテーブルクロスなど(机の汚れ防止に)
・ゴム手袋

ペーストペーパーの道具

まとめ

ペーストペーパーサンプル画像

ペーストペーパーの魅力についてお伝えしてきましたがいかがだったでしょうか?

でんぷん糊、絵の具、紙、どれも小学校で使っているものなので気軽に始められますよね。

詳しい作り方はまた別の記事でお伝えしたいと思います。

興味を持たれた方、楽しみにしていてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。