カリグラフィーでは字を書く前に必要な作業として「ガイドラインを引くこと」があります。
字の大きさを揃えたり、真っすぐ横に書いていくために必要不可欠なのですが、地味な作業でめんどくさいんですよね。私はあまり好きな作業ではないです…
一行書こうとするだけで、ベースライン、ウエストライン、アセンダーライン、ディセンダーラインと4本の線が必要で、それを何行も書くわけですからちょっとうんざりしますよね。
ほとんどが平行線を書く作業ですが、平行線を書くとなると、
・直線定規しかもっていない場合は二か所にしるしを打って、しるし同士をつなげていくということになります。
・三角定規を二本セットで持っていれば、一か所しるしを付けておき、片方の三角定規にもう片方の三角定規を滑らせれば平行線を書けますね。
しかしこれでもすぐにずれたり三角定規を押さえる腕が疲れたりしてきます。
練習に向いているB4サイズ程度の紙に引こうとするとかなり大きな三角定規が必要となりちょっと邪魔ですよね。
さらに傾斜のラインを引くときは分度器を使いその線に平行な線を引く・・・となります。
せっかく書く気満々だったのがもう疲れてきてしまう。やる気もなくなる。それは避けたいですよね。
それではどんな方法がいいかというと、「平行定規と勾配定規を使う」という方法です。
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この二つの道具は建築などの製図をするときのものです。
私は建築科を卒業したのでカリグラフィーを始める前から持っていましたが、これ以外の方法は面倒くさくてやりたくないです。
建築などの製図をする人にしか馴染みのないものですから知らない方も多いと思いますので、分かりやすく説明していきます。
平行定規
平行定規とはスライドする定規が製図版に付いている製図道具です。いろいろなメーカーとサイズがありますが私が使用しているのはマックスのMP-400FLというA2サイズのものです。
この平行定規のいいところはこんなところです。
・横に長い定規が左右のワイヤで正確に上下移動する。
・定規をほんの少し浮かしておくこともできるため、書いた線を引きずって紙を汚すことがなく、厚みのあるボードにも対応できる。
・定規を好きな場所でロックすることができる。
・製図版に傾斜をつけられるので姿勢が楽
・板がマグネットになっているので紙の固定が楽(スチールテープが付いています)
これを使うと、左端につけたしるしの一番上から右に線を引き、どんどん定規を下げていけば一気に平行線が引けます。
平行線が引けたら次はスラント(文字の傾き)のガイドラインですが、これには勾配定規を使います。
勾配定規(こうばいじょうぎ)
勾配定規とは角度(DEGREE)、勾配(RISE)、斜面(SLOPE)が分かる製図道具です。
平行定規とセットで使います。
勾配(RISE)は建物の屋根勾配などを製図するときに使います。
「4寸勾配の屋根」とか聞いたことないでしょうか?4寸勾配の屋根の線を引きたいときは定規の目盛をRISEの4に合わせて平行定規に乗せればすぐに線が引けます。
斜面(SLOPE)は水平距離と傾斜角度が分かっているとき、DEGREEを傾斜角度に合わせればその斜面の距離が分かるようになっています。
簡単に説明するとこんな感じなのですが説明書を見るとtanθ、secθ、cosθなどが出てくるので、拒絶反応起こす方もいるかもしれませんね。
でもこの二つの機能はカリグラフィーでガイドラインを引くにはまったく使わないので、理解できなくても大丈夫です。安心してください!
使うのは角度(DEGREE)だけです!
例えば、ネジを緩めて赤い線をDEGREEの30・60の位置に合わせると引ける線の角度は画像のようになります。
模写してみたいお手本があるときなど、お手本の上に勾配定規を置いて(底辺だけはベースラインに平行に)定規を開閉してスラントやペン角度を調べることもできるので便利です。
それでは具体的な使い方を説明していきます。
ガイドラインの引き方
(例)イタリック体 C2のニブを使用、スラント5°、ペンの角度40°
1)平行定規を一番下に下げ、用紙の下端が定規に添うように用紙を置く。
2)スチールテープかマスキングテープなどで用紙を固定する。
3)イタリック体のX‐ハイトはペン先5つ分なので用紙の左上の方に5つ分のしるしをC2のペンで書く。
4)3)のしるしの上下に線を引き、二本の線の距離を測る。ここでは14mmとなりました。
アセンダー、ディセンダーもペン先5つ分なのでそれぞれ14mmになります。
5)用紙の左端にしるしをつけていきます。練習用なら濃く書いてもいいですが、作品にするときは薄い方がいいので、0.3のシャープペンか2Hの濃さの鉛筆で力を入れず小さな点を打ちます。行間はお好みの間隔を空けてください。ここでは5㎜空けました。
6)一番上のしるしから線を引いていきます。
定規が動かないように押さえながら、シャープペンの先がしっかり定規に当たるようにして薄く引きます。芯は丸まってくると太くなるので、製図の時はペンを回しながら引くのですが、ガイドラインではそこまでしなくても大丈夫と思います。(画像用にこれでも濃く書いています)
7)次に勾配定規をDEGREEの5の位置に合わせネジを締めます。
8)勾配定規を平行定規に当て、スラントのラインを左上の方から引いていきます。線は下から上に引きます。線が足りない時は平行定規を下にずらして線の続きを書きます。
または平行定規の下端に勾配定規を上下逆さまに置けば書けます。
9)ペン角度40°のガイドラインはDEGREEを40に合わせ画像のように向きを変えて置き、8)と同じ作業をします。
10)X-ハイトの位置にX印をつけ、使用するペン、角度の情報などを入れたら出来上がりです。
ガイドラインの応用編
ここまで読んでいただいてそれでも「あーめんどくさい」と思いませんか?
練習で毎回これはいやですよね。そこでいくつか楽になる方法をお伝えします。
1)ガイドシートにしてしまう
例えばイタリック体で、ペン先はC2でスラントは5°専用のガイドシートを作り、その上に練習用紙をのせて透かして練習する。という方法です。
この場合ガイドシートを透かすので線は濃く書きます。
一枚の紙にX‐ハイトの違うガイドラインを一行ずつ書いて練習中は用紙をずらしていくというのも便利です。
2)1)で透けない用紙に書く場合
透けない紙に書く場合、一つはライトテーブルを使うという手があります。
ない場合は練習用紙の下にガイドシートを左が少し出るように重ねて固定します。少し見えているラインをしるしとしてそこから線を引いていく。という方法。
3)オリジナル定規を作る
何枚も同じガイドラインが必要な場合や、ガイドラインが複雑な凝った作品を作る場合はオリジナル定規を作っておくと楽です。2)で左端に見えている部分だけの定規ということです。
作品にしるしの点を打たないので紙面を汚さずに済むのもメリットです。
気になるお値段は・・・
ここまで長々と説明してきましたが製図道具…お値段気になりますよね。(汗)
ちょっとお伝えしにくいんですがアマゾンで見た限りでは、
平行定規 25,000~35,000円くらい(A2サイズの場合)
勾配定規 3,000円前後
なんです。お値段が張るので代替案としては
使い勝手は少し落ちますがT定規と三角定規を使う方法もあります。
名前の通りT型の定規で、直線のある机の左端にTの横棒部分をひっかけて
上下にスライドさせれば平行線が引けます。
私のT定規はTの横棒にあたる部分が訳あって改造されています…
押さえるのが疲れますが、平行定規に入らない大きさの紙に書く場合だとこちらの方が使えます。ダイニングテーブルが大きい製図版になったりします!ちなみに、
T定規 3,000~4,000円くらい(60cmの場合)90㎝あるとベター
普通の三角定規セットと分度器合わせて 1,500~2,000円くらい(30cm三角定規の場合)
予算に合わせて組み合わせればいいと思いますが、メルカリで探すのもいいと思います。
これを書いている時点で結構いいのが出ていました。私もメルカリは使わせてもらっていて、画材も買ったりしています。
その他に便利な道具としては定規にローラーが付いていて平行に移動できるという変わった定規があります。ローリング定規とか万能定規と言われるもので30㎝のもので1,000円くらいでしょうか。
ちょっとした線を引くのにはいいかもしれないですね。
製図道具でガイドラインを引くってちょっとカッコよく感じませんか?
地味な作業も気分が上がりますよね。
道具好きの方は特に(笑)
私は大学時代からずっと使っていて試験会場に持っていったり、友人に貸したりしていますが壊れたこともないですし丈夫だと思います。
使用年数を考えると本格的にカリグラフィーをやっていきたい方には特に平行定規と勾配定規の組み合わせをおすすめします!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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