カリグラフィー練習の際、「Thank You」「Happy Birthday」などの簡単な単語や短い文章を書くことが多いですが、使用頻度の低い「q」「x」「z」などはなかなか練習する機会がありません。
aからzまで順に書くのも飽きが来ますし、まんべんなく練習しようとしてzから逆に書いていっても順番が分からなくなったりしますよね。
単語によく出てくる並び順の練習にもならないところもデメリットです。
これを解決するために「パングラムで練習する」という方法があるので紹介したいと思います。
パングラムとは
パングラム(pangram)とは、ギリシャ語で「全ての文字」という意味があるように、ある言語において全ての文字を使ってできた文のことです。
全ての文字を使っていれば同じ文字を複数回使っても良いことになっていますが、短い方が良く、また意味のある文章ほど良いとされています。
全ての文字を一度しか使わないものは「完全パングラム」と呼ばれています。
パングラムを書くということは、全ての文字を練習できるということなのでカリグラフィーの練習でも英語のパングラムをよく使います。
全ての文字の確認ができるため、フォントのサンプルにも使われているのを見たことがあるのではないでしょうか。
カリグラフィーで使いやすいパングラム
完全パングラムではありませんがカリグラフィーで使いやすい英語のパングラムです。
簡単な単語で意味も分かり、覚えやすいものを選びました。
The quick brown fox jumps over the lazy dog.
(足の速い茶色の狐がのろまな犬を飛び越える。)
Pack my box with five dozen liquor jugs.
(5ダースの酒瓶を私の箱に入れろ。)
Sphinx of black quartz, judge my vow.
(黒い水晶のスフィンクスよ、わが誓いを審判せよ。)
こちらは完全パングラムで、大文字や五種類の記号が入っていて良い練習になります。
New job: fix Mr. Gluck’s hazy TV, PDQ! (PDQ : Pretty Damn Quick)
(新しい仕事:グレッグさんのぼやけたテレビを修理、大至急!)
ドイツ語のパングラム
Sylvia wagt quick den Jux bei Pforzheim.
(シルビアはプフォルツハイムで急いで冗談を言ってみる。)
フランス語のパングラム
Portez ce vieux whisky au juge blond qui fume.
(タバコを吸っている金髪の裁判官にこの年代物のウィスキーをもっていきなさい。)
このほかにイタリア語、スペイン語、ロシア語、タイ語、モンゴル語、ヘブライ語などもパングラムがあるようですが、中国語は漢字の数が膨大なのでないようです。
ひらがなのパングラム
せっかくなので、ここで日本が誇るパングラムを紹介します。
それは、ご存じ「いろは歌」です。「いろはにほへと」と言った方が伝わりやすいでしょうか。
「いろはにほへとちりぬるをわかよたれそつねならむうゐのおくやまけふこえてあさきゆめみしゑひもせす」
これはひらがな全てを一度ずつ使ってできています。
(ひらがなの「ん」は入れない、「ゐ」と「ゑ」は入って全47文字)
この歌を漢字で書くと次のようになります。
「色は匂へど散りぬるを 我が世誰ぞ常ならむ 有為の奥山今日越えて 浅き夢見じ酔ひもせず」
内容の解釈はいくつかあるようですが、仏教の無常について述べたものと解釈することが多いようです。
解釈の一つとして京都・仁和寺の法話からの引用を載せておきます。
『花は咲いても、たちまち散ってしまう。人も生まれ、やがて死ぬ。この世の中にずっと同じ姿で存在し続けるものは何もない。無常は生ある者の免れえない運命である。様々な因縁から生じる無常の世(奥山)を超越して、人生という険しい山を今日一つ乗り越えて、はかない夢、永遠にお金や家や自分自身が存在するという煩悩を捨てよう。
人生は苦しみや悩み・後悔が多いけれど、その中から小さな喜びを沢山見つけ、毎日を一生懸命大切に生きていこう。
酔っ払って、現実から逃げないように、今をしっかり見つめて生きていこう。その心に覚りの境地がある』という意味になります。
真言宗御室派 総本山仁和寺 今月の法話より引用
作者は不明ですが、平安時代の後期に作られたそうです。
完全パングラムでその上このような深い、すばらしい意味があるなんて日本人として誇りに思いませんか?
まとめ
話が少し逸れてしまいましたが、カリグラフィーの練習にパングラムを使ってまんべんなく文字を美しくしていきましょう!
頭の体操に、自分でパングラムを作ってみるのもいいかもしれませんね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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