子どもの頃、伸ばして丸めてエンドレスに遊んだ方も多いのではないかと思います。
匂い付きとか、かわいいケースに入ったのとかありましたよね?
学校の先生に持ってくるの禁止されたりして、ふつうの消しゴムのカスを集めて糊を混ぜて練り消しだ!とかやっていた記憶があります(笑)。
ですが、練り消しって子供のおもちゃではなく画材なんですよ!
今回は練り消しの他にもいろいろある「消す道具」について、「何を消すか」「どう消すか」でどう使い分けるかを説明します。
Contents
消しゴムとは
まずは「消しゴム」について。
正確には「字消し」と言います。
消しゴムには天然ゴムで出来ているゴム字消しと呼ばれるものと、
プラスチック(主としてポリ塩化ビニル)で出来ているプラスチック字消しと呼ばれるものがあります。
普段よく使われている消しゴムはプラスチック字消しの方で、シャープペンや鉛筆の頭部に付いているのは強くて減りの少ないゴム消しの方です。消し心地が少し違いますよね。
消しゴムの原理は紙に付いた鉛筆の黒鉛を消しゴムでこすることでゴムに黒鉛を付着させ、消しカスとなってさらに黒鉛を巻き取って行く。ということを繰り返して字が消えていきます。
こういう原理なので紙に染み込むインクで書かれたものが消えないわけが分かりますね。
(砂消しを使う手もありますが、後で説明します。)
それでは字消しの種類ごとに説明していきます。
プラスチック字消し
消しゴムと言って想像するのは、ほとんどの人がプラスチック字消しの方だと思いますが、名前がゴムなので材料がプラスチックだと知っている人は少ないのではないでしょうか。
ポリ塩化ビニル(PVC)が材料になっていて添加物に可塑剤、安定剤などが含まれます。
プラスチック字消しは、プラスチック製品に長期間接触していると可塑剤が溶けだし、プラスチックを溶かしてしまいます。そうならないためにも紙のケースは取らないようにしましょう。
ちなみにプラスチック字消しは日本の会社が開発しました。
使う場面
- 構想段階の鉛筆書きを消すのに活躍します。
書いては消し、消しては書くを繰り返すため、ガシガシ使うには力を入れずに消せて疲れにくいプラスチック消しゴムが良いです。
たくさん使ってもお値段が安いのもGOOD。 - 構想で2B以上の濃い鉛筆を使う方は2B以上が消えやすい消しゴムを使うと良いです。
最近の小学生は2Bや4Bなどを使っているので濃い鉛筆用の消しゴムは結構売られています。
- 作品が出来上がった後にガイドラインなどを消す。
絵の具を引っ張ってしまったり、絵の具が消しゴムに付いてしまう場合があり、そのまま別の場所を消したときに消しゴムに付いた絵の具がその場所に付いてしまうことがあるので、こすり取るかカッターナイフで削るなどして、消しゴムの面をきれいに保つようにしましょう。
薄い鉛筆は硬いので少し力を入れても紙にめり込んでしまっていることがあります。
そうなるとめり込んで溝になっているところに黒鉛が入っているので消しゴムが届かず消えにくくなりますので注意してください。
PVCは燃やすとダイオキシンが出たり、マイクロプラスチックにもなったりと環境に良くありません。また可塑剤、安定剤として使われている化学物質も内分泌かく乱物質だったりして健康を害するものです。
このような環境負荷を軽減する商品として、「PVCフリー」「nonPVC」と表記された消しゴムが売られていますので是非チェックしてみてください。
カンキョウ ニ ワルイモノハ イヤヨー
ゴム字消し
ラバー消しゴムとも言われ、天然ゴムや合成ゴムで出来ています。
燃やしても有毒ガスは発生しませんが、合成ゴムは自然分解されません。
折れにくく減りも少ないのでシャープペンや鉛筆の頭部に使われています。
消し具合はプラスチック字消しと遜色ないようなので環境のことを考えるとこちらを使っていった方がよいですね。
欧米では小学生でも鉛筆やシャープペンシルをあまり使わないのでプラスチック消しゴムが発展せず、ゴム字消しの方が多いようです。
日本ではプラスチック字消しが主流となってしまっているのでゴム字消しは少ないですが、その中でもシードのスーパーゴールドという字消しは使うのがもったいないと思えるほどデザインが素敵です。ゴールドのアルミのスリーブに包まれていてケースもおしゃれなので持っているだけで気分が上がりそうです。
SEED SUPER Gold
海外製かと思うような素敵なデザイン。
ゴムの重量感もあるせいか、軽い力でよく消えます。
ゴムの匂いは近づけば分かるくらいでそれほど気になりません。
減りが少ないので多少お値段がしてもコスパはいいと思います。
プレゼントにもいいですね!
使う場面
- プラスチック字消しと同じ。
砂消しゴム
砂消しゴムはゴム字消しの一種で、研磨剤として珪砂(けいしゃ)が含まれています。
インクごと紙を削り取っていくので、ボールペンや印字も消せます。
プラスチック字消しのようなやり方でゴシゴシこすると紙が破れたり穴が開いたりするので、軽く円を描くように動かします。紙が毛羽立ってきたらスカルペルナイフ(メス、曲線刃のナイフ)で毛羽を削ってきれいにします。カッターナイフでも良いです。
薄い紙は穴が開きやすく、紙の内部まで染み込んでしまったインクは取れにくいです。
使う場面
- インクや絵の具で書いた文字の修正・汚れの除去
①修正したい文字
墨で書いたhです。
2画目が歪んでしまったので消して修正します。
②砂消しゴムで消す
墨で書かれているので砂消しゴムを使います。
紙はアルシュの細目なので砂消しゴムに耐えられそうです。
円を描くようにやさしく滑らせますがなかなか消えないので少し力を入れました。
③字消し板を使う
1画目との接合部には1画目が消えないように字消し板を使います。
適当な穴を消したい部分に合わせて置きます。
字消し板については後述します。
字消し板を抑えながら穴の中だけに砂消しゴムをかけます。
④どんどん消す
接合部分が消えました。
残りの部分もしっかり消していきます。
(②の時点でちょっと疲れたので接合部分やってました(笑))
⑤スカルペルナイフで削る
なかなか完全に消えないのと、紙面の毛羽立ちをなくして表面を滑らかにするためにスカルペルナイフで削ります。
ほとんど力は入れず、表面をすべらす感じです。
ナイフの表面に細かい紙の粉が付いているのが分かりますか?
スカルペルナイフについては後述します。
⑥消し終わり
完全に消えました。
画像だと消したところが少しテカテカしていますが実際はほとんど分かりません。
ここに2画目を書くので、にじみ止めにガムサンダラックをふりかけると良いのですが今回は忘れてしまいました。
⑦出来上がり
2画目を書き入れました。紙質が良かったのでガムサンダラックをかけなくてもきれいに書けました。
作品本番では修正がちゃんとできるか実験してから修正してくださいね!
練り消しゴム
練消しゴムは美術のデッサンに使われるので画材屋さんでも売られています。
こすって消すのではなく、押し付けるようにします。
黒くなった面を内側に巻き込んできれいな面を出して使うため消しカスは出ません。
デッサンでは濃い鉛筆や木炭、パステルなど、粉末の多く出る描画材を使うため、プラスチック字消しなどを使うと取れきれなかった粉末を引きずってしまって紙面が汚れてしまいます。また紙面をこすることで紙面の表面の凹凸などが変わってしまい、鉛筆のノリが違ってしまいます。こういったことを避けるため練り消しゴムが使われるのです。
練り消しゴムは購入したものを一気に丸めてしまうと大きくて使い辛いので、球体で直径2㎝くらいの大きさの量にして少しずつ使っていきます。
使うときは軽く練って柔らかくします。だんだん黒ずんできて紙面を汚すようになったら替え時です。
練り消しゴムは形を自由に変えられるので以下のような便利な使い方ができます。
使う場面
- 下書きの線を薄くする時に練消しを棒状にして転がすという消し方をします。こうすることで均一に薄くなります。
下書きの上にインクや絵の具で書こうとした場合に鉛筆の黒鉛でインクや絵の具が弾いてしまったり、黒鉛が混じって黒くなるのを防ぐためです。 - 尖らせて細かい部分を消す。
- 丸めてぼかしを表現する。
下書きの線を薄くする方法
このような下書きをして、上から絵の具などでなぞる場合、鉛筆の粉が絵の具と混ざってしまいます。
①練消しゴムを棒状に丸める
直径2㎝の球の練消しゴムを棒状にするとこんな感じです。それを下書きの上にやさしく転がします。
②転がした練消しゴム
このように練消しゴムに簡単に下書きが移ります。
目指す薄さになるまで転がします。
③細かい部分
余分な線で細かい部分は練消しゴムを尖らせて消します。
④出来上がり
かなり薄くなりました。
ぼかし
こちらは色鉛筆画の部分に練消しゴムを使ってムラを出しているところです。
ペン型消しゴム
ペン型消しゴムにはノックタイプ・スライドタイプ・繰り出しタイプなどの種類があり、太さもいろいろです。
ほとんどプラスチック字消しですが、ステッドラーには砂消しゴムタイプで鉛筆型というものがあります。
とにかく細かいところをピンポイントで消せるというのが魅力。
私の愛用品は「トンボ鉛筆 MONO ZERO 角型」で2.5×5㎜の太さ。
細いものは「トンボ鉛筆 MONO ZERO 丸型」で直径2.3㎜です。
デッサンや色鉛筆画などで白抜きしたいときにも便利です。
使う場面
- 入り組んだ細かいところ、少しはみ出た部分
- 白抜き、ぼかし
画像では「トンボ鉛筆 MONO ZERO 角型」を使用しています。
電動消しゴム
電動消しゴムはもともと製図用品として開発されたものですが、絵画やデザインの分野でも使われます。
ペン型消しゴムの一種ですが電動なので手に力を入れず、スピーディーに消すことができます。
消しゴムには鉛筆用、インク用など二種類以上付属している製品もあります。
また、消しゴムのサイズは長さ約13~25mm、直径が約2.3~5mmとメーカーによって違いがあります。
電源には、アダプターを使って電源に繋いで使うアダプター式、USBなどを使って充電して使う充電式、乾電池を使った電池式がありますが、カリグラフィーで使うなら電池式のコードレスで軽いものがおすすめです。
電動消しゴムは回転した消しゴムを紙面に押し付けて消すので反発する力があり、慣れるまでは少し練習が必要です。
電動消しゴムの長さはペン型消しゴムと違って長さが2㎝程しかなく、減りが早いです。替えゴムが別売されているか確認しましょう。
使う場面
- ペン型消しゴムと同じ。
スカルペルナイフ
スカルペルとはメスという意味で、刃が曲線になっているナイフのことです。
平らな紙に当たりやすく、また直線の刃よりも少し動かしただけでよく切れます。
ホームセンターの工具売り場のカッターナイフコーナーにあったりします。
使う場面
- 砂消しゴムで消したときの紙の毛羽立ちを取る。
- インクを直接紙ごと削る。
- 消すこと以外に消しゴムを切ったり、紙を切ったりするのに使えます。パネルに水張りした紙を剥がすときも便利です。
消しゴムのお供にあると便利なもの
電動消しカスクリーナー
構想中など消しカスが多い時は本当に助かります。
細かい消しカスも吸い取ってくれるので机の上がザラザラしないのもストレスフリー!
製図用ブラシ
作品の上など、電動消しカスクリーナーを滑らすにはちょっと怖い場合はやはりブラシが必要です。柔らかい毛で出来ているので紙面を汚しませんが軽ーく掃いましょう。
字消し板
製図用品の一つで、消したくない場所を覆って消したい場所だけに消しゴムが当たるようにできます。薄いステンレスで出来ていて、いろいろな形の穴が開いており、消したい部分の形に合った穴を選びます。ペン型消しゴムと一緒に使うとよいでしょう。
使う場面
- 入り組んだ部分
- 薄い紙
トレーシングペーパーなど薄い紙に消しゴムをかけるとき、紙がぐちゃっとなり皺が出来てしまうことがありますが、字消し版を使えば面で押さえられているのでぐちゃっとなるのを防げます。
まとめ
鉛筆 | インク・絵具 | 紙にやさしい | 細かい部分 | |
プラスチック字消し | 〇 | ✕ | 〇 | ペン型・字消し版使用なら〇 |
ゴム字消し | 〇 | ✕ | 〇 | ペン型・字消し版使用なら〇 |
砂消しゴム | △ | 〇 | ✕ | ペン型・字消し版使用なら〇 |
練り消しゴム | 〇 | ✕ | ◎ | 〇 |
ペン型消しゴム | 〇 | 砂消しなら〇 | 砂消しは✕ | 〇 |
電動消しゴム | 〇 | 砂消しなら〇 | 砂消しは✕ | 〇 |
スカルペルナイフ | ✕ | 〇 | ✕ | △ |
一口に「消す」と言っても色々な種類とやり方がありますよね。
気になる道具はあったでしょうか?
消す道具を使い分けてストレスフリーなカリグラフィー生活を送りましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。
突然ですが練り消しゴムって持ってますか?