急速にデジタル化が進み、一瞬で様々な文字が書けてしまう今、手書きの良さを再確認するようにカリグラフィーに興味を持つ人が増えているような気がします。
今これを読んでいるあなたは、きっとそんな手書きのぬくもりを求めてここにたどり着いているのかもしれませんね。
たった26文字のアルファベットで書くカリグラフィーですが、始めるととても奥が深いことに気づきます。やってもやっても勉強することだらけです。ですがそれを聞いて尻込みすることはありません。始めるにはそんなに多くの道具や出費もいりません。日本の書道と違って初心者もプロもほぼ同じ道具を使っています。何万円もする筆などないのです。
ここではカリグラフィーとは何なのか、使用する道具、できるようになるとどんなことに使えるのかを簡単に説明したいと思います。
カリグラフィーとは「美しい書き物」
カリグラフィー(Calligraphy)という言葉の語源は、ギリシア語の「CALLI(美しい)」と「GRAPHEIN(書くこと)」に由来しています。ですからカリグラフィーとは美しいアルファベットで書かれたアートということになります。日本では西洋書道と訳され、日本の書道は「Japanese Calligraphy」と言われたりします。
カリグラフィーの歴史
アルファベットの中で一番古く、かつ一番美しい「ローマンキャピタル」という大文字が最も重要です。2000年以上前、主に碑文に使われていて、現代でもローマの遺跡にその姿を見ることができます。上の写真、トラヤヌス帝の碑文の文字はTrajan(トレイジャン)というフォントの元となった文字です。
4世紀ごろ、キリスト教の広がりにより聖書を複製するための写本芸術が発展します。書きやすさを求める中で長い時間をかけてこの文字から様々な書体が作られていきました。
11世紀~12世紀にはゴシック体が、14世紀後半にはイタリック体が生まれ、15世紀中ごろにはグーテンベルクによって活版印刷術が発明されカッパープレート体が生まれました。
印刷技術の発達により写本文化は廃れていってしまい、技術も忘れ去られました。しかし19世紀後半、イギリスのエドワード・ジョンストンが手書き文字を研究し、書き方などを復活させました。そして現在のカリグラフィーの基礎を作り世界中に広まりました。
カリグラフィーの道具
カリグラフィーは金属製のペン先をペン軸に付けて書くことがメインです。
羽ペンを使ったり、筆で書くブラッシュカリグラフィーなどもありますが、まず初心者が揃えたいものをピックアップしてみました。
これさえあれば書ける道具 3点
- ペン先とペン軸
ペン先のことをnib(ニブ)、ペン軸のことをペンホルダーといいます。
初心者におすすめなニブはこの3つ。
・スピードボールCシリーズ(アメリカ:スピードボール社製)
・ミッチェル・ラウンドハンド(イギリス:ウィリアム・ミッチェル社製)
・スクエア・ニブ(ドイツ:ブラウゼ社製)
ニブの先端の幅によって書ける文字の大きさが変わるのでニブは何種類か必要になります。
練習には特にスピードボールのC-2(ペン幅3㎜)がおすすめです。
ペン軸は一本あればニブを付け替えることができます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。↓
- 紙
練習用紙と作品用紙を分けて使います。
練習にはインクのにじまない、引っ掛かりのない上質紙が向きます。
作品用紙には水彩紙が向いています。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。↓
- インク・絵具
水性インクやガッシュ(不透明水彩絵の具)が向いています。
日本人なら慣れ親しんでいる墨も実はカリグラフィーには向いています。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。↓
その他の便利な道具
はまればはまるほど道具が増えていくのはどんな世界も同じでしょうか?(笑)
必要に応じて足していくといいと思います。
- 傾斜板:前のめりにならずに楽な姿勢で書くことができ、インクフローも調節されます。
- 定規:普通の15~50センチ定規に加え、平行なガイドラインを引くのに平行定規やT定規があると便利。
- 分度器:文字の傾きのガイドラインを引くときに。勾配定規という製図用品は特に便利。
平行定規、T定規、勾配定規についてはこちらの記事をご覧ください。
- 鉛筆・シャープペン:ガイドラインを引くときに使うのは2H くらいの薄いのがおすすめ。
- 消しゴム・練り消しゴム:ガイドラインを消すときは練り消しゴムでたたくように消します。下書きが濃すぎるときは棒状にして転がすと程よく薄くなります。
消しゴムなど「消す道具」についての記事はこちらをご覧ください。
- 製図用ブラシ:消しカスを払ったりするときに。
- カッターナイフ:紙を切ったり、間違いを修正したりするときに。
- カッティグマット:カッターの下敷きに。
- ライトテーブル:ガイドラインや下書きを透かしたり、位置合わせなどいろいろと便利。
- マスキングテープ:ガイドシートをとめたり、レイアウト時の仮止めなどに。もちろんマスキングにも。
- 水張り用の道具:水彩のバックグラウンドをしたいときに紙が波打つのを避けるために水張りをします。幅の広い刷毛、水張り用テープ、スポンジ、木製パネル
- スポイト:絵具に水を足すとき、溶いた絵の具を小さい入れ物に入れ替えるときなど。
- パレット:絵具を溶いたり、インクを入れたり。陶器の梅皿が便利です。
- 筆洗:筆を洗うための容器、ジャムの空き瓶などなんでもよいです。
- ぼろ布:筆をぬぐったり、後片付けなどに。
表現方法よってさまざまなテクニックがあり、それぞれ道具が必要になってくるので他にもまだ道具がありますが、追々紹介できたらと思います。
カリグラフィーの用途
カリグラフィーができるとどんな世界が広がるでしょうか?
一例を紹介しますので、生活の中に取り入れてみてください。
- 作品を額装して飾る
- グリーティングカードにして贈る
- 手紙の宛名
- ウェディングのウェルカムボードやペーパーアイテム
- 手帳をおしゃれにカスタマイズ
- ラベルにして収納を楽しく
- アクリル絵の具で書いたものは小物や屋外のペイントにも
まとめ
カリグラフィーについて理解を深めることができたでしょうか?
26文字のアルファベットは日本人の私たちからするととても少なく感じますが、年代ごとに様々な書体があることが分かりましたね。必要な道具は少ないので、道具を使いこなしてどの書体でどういう風に作品にしていくかを考えるのがカリグラフィーの楽しいところだと思います。
小中学校でほとんどの人が書道の経験があるので、アルファベットを美しく書くということを気軽に始めてみてください。きっと新たな世界が広がりますよ!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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